毎日食べても食べ飽きない、
そんなパンを作り続けたい。

●パン職人 林 兵司さん

フランスパンが立てるパチパチという賑やかな音、
「パンの中と外の温度差で起こるこの音を、パンの声と呼ぶんです」
林兵司さん(46才)は池田町会染の「パン工房ブール」のオーブンの前で焼き上がったばかりのフランスパンを指してそう説明してくれた。赤ちゃんの産声のようだ。
French bread  image
ずらりと並んだフランスパンは、背中がパクッと開いて、いかにもうまそうにこんがりと焼けている。
「表面の切り口が開いているのが美味しいフランスパンです」
開いているのは湿気がよく発散しているのでおいしいとのこと。逆に開いていないものは中に湿気がこもって失敗なのだそうだ。

Mr. Hayashi
林さんは主食として食べられるパン、毎日食べても飽きのこないパンを作る、というご自身のレパートリーをきちんと守って、フランスパンを焼いている。
「菓子パンは作っていないんです。菓子パンは菓子パンを得意としているお店が作ればいいことですしね」
「なにも私のパンだけを食べてもらおう、なんて気はありません。誰だって、あんパンが食べたいときもあれば、フランスパンが食べたいときがあるのでかすら、あんパンが食べたいときは、あんパンのあるお店へ、フランスパンが食べたいときは、私のところに来てくださればいいんです。そんなふうにパン屋さんも、専門店があってもいいんじゃないかと思っています」
静かな林さんも、ことパンの話となると次々と話が飛び出す。こんなときの林さんの顔には、長い間培ってきたパン職人としての自信と誇りがみなぎっている。
French bread  image
「最高の材料でおいしいフランスパンを作る。これは個人でやっているからできることで、使用人を使ってやっていては、とても採算がとれず出来ません」
「それに、パンを美味しくするために、添加物は一切使っていません。そのため日持ちは決してよいとはいえません。でも、パンは出来立てを食べていただくのが一番おいしいですから、それで良いんです。たとえ少量でも、その日に食べる分だけを、毎日買いに来てくださるお客様、こんなお客様がうれしいですね」
その日に食べてもらう分だけを作るから、添加物を必要としない。こんな姿勢で焼く林さんのフランスパンの人気は、それを食べた人たちの口コミで、ファンがどんどん増え続けている。
French bread  image
林さんはご自身の出身地名古屋市のDONQで15年間パンの修行をし、いざ独立といったとき迷わず、定住するならこの辺りと心に決めていた池田町に決めたとのこと。
その林さんの仕事場「パン工房ブール」は、池田町安曇野養護学校のすぐ近く、高瀬川に手が届きそうな場所にポツンと建っている。まだ周りに田圃を残し、目の前に北アルプスが聳え立つ快適な地域。表通りからはだいぶ引っ込んでいるが、まさに林さんの希望通りの立地だ。
Shop image
「こんな立地でと、友人からは言われましたが、店を大きくするために表通りでやるとか、宣伝して大々的にやるとか、そんな気はなかったんです。むしろゆっくりと買い物に来ていただけるような、こんな場所でフランスパンを作っていけるならと、ここに決めたんです」
「パン工房がオープンしてからも、特に大きな看板を掲げていないので、ここが美容院だと思いこんでいた人がいたんですよ」と、笑いながら語る益美夫人。
職人気質の林さんを支えて、お店を切りもりする夫人の明るい笑顔が印象的だ。
with wife
●パン工房ブール
 北安曇郡池田町会染11221-41
 TEL/FAX 0261-62-5890 日・月曜日定休

 林さんと益美夫人